かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
なぜ沙之くんがこんなことをしたのか、実の兄の不幸を願うような言葉を残していったのか、私には理由がさっぱりわからない。

仲のいい兄弟だと思っていたのに……。

実際、小さい頃は仲がよかったはずだ。病気がちであまり部屋から出られない沙之くんを、颯志くんが見舞っては仲良くお話ししていたから。

私と颯志くんのふたりでお花を摘んで、沙之くんの部屋まで持っていってあげたこともあった。

私がシロツメクサで花冠を作って沙之くんの頭に載せると、彼はキラキラと目を輝かせて嬉しそうに笑ってくれた。

いつも沙之くんは笑顔で優しくて、それは大人になってからも変わらなくて。

あどけない笑顔は子どもの頃のまま、かわいかった彼を思い起こさせる。

だから颯志くんに対しても、あの頃となにも変わらず慕っているのかと思っていた。

「沙之は、俺のことが気に入らないらしい」

颯志くんは腰に手を当てると、あきらめたみたいに首を振る。
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