かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません
「話し合いなさい。バカみたいにわかりやすく、愛情を伝えるの」

「直喜と沙之の扱いは違うだろ……」

そんなまいった顔の颯志くんを一瞥した後。喜美江さんは私の方に歩み寄ってきて、手を取った。

「瑠莉さん。不安にさせてごめんなさい。私は、颯志くんと瑠莉さんの結婚を祝福するわ」

そう告げて、力強く私の手を握り、念を押すように真っ直ぐ私を見つめる。

それは本心？　喜美江さんの中には、颯志くんへの気持ちが残っていないの？　

聞きたいけれど、聞けない。そんな私の心中を察したのか、喜美江さんは自ら自身の心の内を吐露してくれた。

「ずっと申し訳なく思っていたの。私が、彼を傷つけてしまったって。でも、私が思っているより彼はずっと大人だった。ひとりでとっくに過去を乗り越えていたわ」

喜美江さんが颯志くんへ顔を向けると、颯志くんは目線に応えてこくりと頷く。

「私たちは円満なお別れをしたの。さっき、それをお互い確認することが出来た。だから今、彼が大切にしているのは、私ではなくあなたよ。瑠莉さん」

「喜美江さん……」

信じられない思いで颯志くんを見上げると、颯志くんは困り果てた顔で「だからそうだって、ずっと言っているだろ」とむくれた。
< 152 / 218 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop