かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「ほら。いつまでもここにいたら、瑠莉が着替えられないだろ」

そう言って颯志くんは、ふた家族を引きつれて、別室の親族用控室へと先導する。

私は控室にひとり残されて、ぼんやりとドレスを眺めながら、結婚式前特有のセンチな気分に浸っていた。

颯志くんのお嫁さんになるのが、幼い頃からの夢だった。

今、その夢がとうとう現実になろうとしている。

この結婚を皮切りに、新居での新婚生活も始まって、一か月後には新婚旅行へ。順風満帆にことが運んでいる。

もっと早い時期に新居に移り住もうという話も挙がったが、一人娘の私が早々に家を出てしまったら父と母は寂しがるだろうと、ギリギリまで別れを惜しむ時間をもらった。

とはいえ、結婚したからといって完全に家庭に収まるつもりはなく、しばらくは仕事を続けるつもりだ。

だから、会社に行けば毎日両親と顔を合わせることになるし、実家と新居の距離もそこまで遠くはないから、大袈裟なお別れというわけではない。
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