かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「俺のことを、なにも出来ないガキ扱いするから」

「そんなことないと思うよ」

「兄貴の中で俺は、いつまで経っても病気がちで、か細い子どものまんまなんだよ」

ギッと睨まれ私は息を呑む。怒りなのか、失望なのか、その瞳は鋭い。

「兄貴だけじゃない。俺のことをお荷物としか思っていない両親も嫌いだ。兄貴に全部背負わせて、自分たちは罪の意識もなくのうのうとしている。喜美江さんの件だってそうだ。本来なら、今この場にいたのは、あなたじゃなく喜美江さんだったかもしれないのに、何事もなかったかのように平気な顔して」

一歩、ポケットに手を突っ込んだまま、私の方へ歩み寄る。

表情から家族への憎しみが嫌っていうほど伝わってきた。

沙之くんは、いつからこんなにも悲しい気持ちを背負うようになったのだろう。

周りの人、誰も気づかずに手を差し伸べてあげられなかっただなんて。ご両親も、颯志くんも、そして私も。

じんわりと後悔の気持ちが込み上げてくる。
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