かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
彼の頬も瞳も赤く、充血しているように見える。もしかして、すごく酔ってるの?

拓真さんは察したように距離をとり、私たちの前から姿を消した。

「さっそく顔が赤くなってるな。無理してないか?」

私の右肩に回していた手を遊ばせて、髪の隙間に指を差し入れる。

幾度が梳いた後、指先が挑発するように耳のうしろをなぞった。

「っ颯志くん……」

思わずぞくりと震えて見悶えた。

赤く火照る顔はお酒のせいだけじゃない……動揺する私を覗き込み、颯志くんは見透かすように小さく笑う。

「どうした? 大人の女って割には、余裕がないぞ?」

「ちょ、ちょっとお酒が強くて……」

噓。本当は、私の首筋をくすぐる颯志くんの指先に翻弄されているから。

とにかく、高鳴った鼓動と荒い呼吸に気づかれてしまわないように、そっと息を殺した。
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