かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
彼は遊ぶように唇を近づけてきて……一瞬キスされるのかと思い、ピクリと唇を震わせるも、彼はなにもせずに再び顔の距離を戻した。

「こんなところでこれ以上イチャつくわけにはいかないか」

悪いことを企む狡猾な男の顔で、ニッと笑う。

「続きは、部屋に行ってからにしよう」

続きって……?

彼は私に回す腕を解いて、ウイスキーの入ったグラスを持ち上げた。

私も弾かれるようにカクテルグラスを口もとに運び、マンハッタンを喉の奥に流し込む。

大人の味。甘くて、苦くて、甘美な……。

……颯志くん……。

カクテルを口に運びながら、ふたりぽつぽつと会話を続けるけれど、正直言って私の心はすっかりかき乱されてしまって、その場の雰囲気を楽しむどころではなかった。
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