かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
六年前に振られてから、もう彼と会ってはいけないのだとずっと歯止めをかけてきた。

せっかく彼が来てくれたのに、私に再会のチャンスを与えてくれたのに、このままお別れだなんて……。

とはいえ、濡れた頭にすっぴん、部屋着のこの状況、どうしたものかと戸惑っていると。

『……土曜日。時間を作れるか?』

颯志くんがポツリと切り出したので、私はごくりと息を呑み込んだ。

『今週末は実家に帰るつもりなんだ。だから、瑠莉の都合のいいときに呼んでくれれば、いつでもかけつけられる』

私は窓にそっと手を当てて、道を挟んで向かいにそびえ立つ立派な大豪邸を見上げる。

神楽邸――目の前に見える、私の家の十倍はありそうな庭つきのお屋敷が彼の実家。

彼のお父さまは『神楽ホールディングス』という大きなグループ会社の社長をしていて、長者番付にも名前が載ってしまうほどのすごい人なのだ。

私の家も、一応小さな会社を経営しているから、地価の高いこの地域になんとか家を構えていられるけれど、規模は『神楽ホールディングス』の足元にも及ばないし、見るからに格が違う。

それも、颯志くんとの距離を感じてしまう要因のひとつだった。
< 5 / 218 >

この作品をシェア

pagetop