かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「こっちだ」

そう先導して彼はホールの中央にある螺旋階段を昇り、二階の一番奥にある部屋へと向かった。

重厚な木のドアをコツコツとノックし、「親父。入るよ」そう声をかけて扉を押し開ける。

「颯志か。よく来たな」

声は部屋の中央にある大きなベッドの上から響いてきた。

口調から歓迎されているのだとすぐにわかったけれど、久々に耳にしたお父さまの声は、掠れていて力ない。

昔は貫禄たっぷりで威厳を漂わせていたお父さまだったけれど、今やその体は細くやつれ、ベッドに力なく横たわっている。

聞けば、三か月前から病に侵され、今ではこうして寝たきりに近い毎日を送っているらしい。

脇には点滴と心電図のモニターが設置されていて、ピッ、ピッ、と定期的な電子音を響かせていた。
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