かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
お父さまの昔話に、颯志くんは迷惑そうに顔をしかめたが、頬がわずかに染まっていてどうやら照れている様子。

本当に、そんなこと思ってくれていたのだろうか。

でも……わかっている。颯志くんの言うように、それは子どもの頃のお話。今の彼は私のことをなんとも思っていないし――。

――これは、お芝居だもんね。

気を抜くと涙が滲みそうになる。大好きな颯志くんと結ばれたというのに、こんな気持ちの伴わないゴールイン、素直に喜ぶことも出来ない。

「では、ふたりの結婚式まで、もう少し生き長らえなければな」

「ちゃんと手術を受けてくれよ」

「……わかった。かわいい娘の花嫁衣裳を見せてもらうまで、死ぬことはできんな。手術を受けるよ」

そう言い終えるとお父さまは、力尽きたように瞳を閉じた。
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