かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

「ああ、頼んだよ、親父」

颯志くんが眠ってしまったお父さまへかけた言葉は、ひとり言のようで、必死の懇願にも聞こえた。颯志くんの焦りがうかがえる。

気持ちが痛いほど伝わってくる。彼はお父さまのことが大好きで、絶対に失いたくないと思っている。

自分の人生を――『結婚』という大切な岐路を投げうってでも。　



お父さまが安らかな寝息を立てているのを確認して、私たちは部屋を出た。

「瑠莉……ありがとう」

颯志くんが罪悪感に満ちた悲しい目をして微笑んだ。

少しでも彼の葛藤を拭い去ってあげたくて、私は首を横に振る。

お父さまが生きられるかどうか、確率が30％だと聞かされたのは、一週間前、颯志くんからプロポーズされたベッドの上でだった。