かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

……そっか。週末は実家に帰ってくるんだ。

幼い頃は会おうと思えばすぐ会える距離にいたけれど、彼は働き始めてしばらく経つと家を出てしまったから、物理的にも会うことが困難になった。

携帯の番号に電話をすれば、出てくれたのかもしれないけれど、振られてしまった手前、かけてはいけないのだと自分に言い聞かせていた。

「……わかりました。私は何時でも大丈夫ですが……」

『そうだな……瑠莉に時間の余裕があるなら、一緒に昼飯でも食べに行くか？』

一緒に食事！？　まさかの申し出に思わず胸が高鳴って、両手でスマホをぎゅっと握りしめた。

『準備できたら電話してくれ。迎えにいく』

「は、はい……」

『じゃあ、土曜に』

通話が切れ、しばらくすると、静かな夜の住宅街に車のエンジン音が響いた。

部屋の明かりが反射して窓ガラスの向こうは真っ暗だが、車から放たれるライトが周囲の家々を照らしながらゆっくりと流れていくのだけは見えた。

その光と音がとらえられなくなるまでじっと五感を研ぎ澄ませた後、その場にしゃが込みスマホを抱きしめながら「はぁぁ……」と深いため息をついた。