かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

加住先生とは、私がまだ小さくてこの屋敷によく遊びに来ていた頃、屋敷内の生け花の飾りつけを担当していた華道家だ。

私も花を生けて遊ばせてもらったから先生のことはよく覚えている。

確かに、言われてみれば、その漆黒の髪の女性――喜美江さんは、顔立ちが加住先生によく似ていた。

「喜美江さん、こんにちは」

颯志くんは階段を降りながら、ホールで配達業者に指示を飛ばしている喜美江さんに挨拶をした。

「あら、颯志くん、帰ってたのね。久しぶり」

「相変わらず元気そうで、安心した」

「ありがとう。颯志くんは……ちょっと大人っぽくなったわね」

颯志くんが話しかけると、喜美江さんは凛とした表情を緩ませて、はつらつとした笑顔をのぞかせた。

和装のイメージからおしとやかに見えていたけれど、どうやら快活な人のようだ。

雰囲気や言葉使いから、颯志くんより年上なんじゃないかと思った。成熟した大人の女性といった印象だ。