かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

待ち合わせをした懐石料理店に辿りつくと、予定よりも早く仕事を終えたお母さまが一足先に到着していて、私たちを出迎えてくれた。

席に着くと、すぐさま豪勢なお料理が運ばれてくる。

「颯志の相手が瑠莉ちゃんで、本当によかったわ」

お母さまは、私のお猪口に日本酒を注ぎながら、満足そうに微笑んでくれた。

「同じ台詞を、親父と沙之にも言われたよ」

「みんな心配していたのよ、颯志ったら、女性と『真剣に』お付き合いする素振りが全く見られないんですもの」

お母さまは日本酒の入った徳利を置くと、悩ましげに頬に手を添えた。

それにしても、『真剣に』と妙に強調したのはどういう意図があってのことだろう。

「俺の女性関係について、なにを知ってるっていうんだよ」

颯志くんが不満そうに声をあげると、

「あら、だいたい知っているわよ。探偵を雇っていたもの」

さらりと言ってのけたお母さまに、颯志くんはゴフッとむせて、慌ててお茶を喉に流し込んだ。