かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「……颯志くん?」

突然キスをやめた俺を訝しく思っているのだろう。腕の中の瑠莉が、心配そうな顔でこちらを見つめている。

「……悪い。キスばかりして、焦りすぎだな」

照れくさくなって顔を背けると、彼女が俺のシャツをきゅっと掴むのを感じた。

やめろ。耐えられなくなるだろ。

彼女の手を握ったまま、大きく深呼吸する。

どうしたら彼女の信頼を勝ち取れるか――おそらく、今ここで襲ったら逆効果だ。

抱いてしまいたいのはやまやまだが、今縮めるべきなのは体の距離じゃない、心の距離だ。

「……さっきの結婚式の話だけど。お前はどう考えている? もし派手な挙式が嫌なら、海外でふたりきりであげてもいいが」

話題を結婚式の話に戻すと、瑠莉の目がパッと輝いて、嬉しそうに微笑んだ。

「それも素敵ですけど、せっかくお母さまがああ言ってくださってますし、盛大にやるのもいいかなって」

どうやら母の顔を立てるために話を合わせてくれていたわけじゃなくて、本当に盛大な結婚式を楽しみにしてくれているらしい。
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