かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
確かに、ぐったりと力なく横たわっていた先週のお父さまとは、雰囲気も表情も全然違う。

今のお父さまは、希望に満ち溢れていて、病魔になんか負けそうにない。昔の威厳漂うお父さまに戻ったみたいだ。

「沙之。少し外してくれるか。瑠莉ちゃんとふたりで話がしたい」

お父さまの申し出に、沙之くんは「客間で待っているよ」と言って部屋を出ていった。

私が近寄るとお父さまは「そこへ座りなさい」と看病用のチェアを指差す。

「まずはお礼を言わせてほしい。颯志と婚約してくれて、本当にありがとう」

お父さまはお辞儀をするように瞳を閉じる。

「お礼を言うのは私の方です。婚約を祝福してくださって、本当にありがとうございます」

「もちろんだ。私たちに出来ることならなんでもする。ふたりが幸せになれるよう、全力を尽くそう。だから、瑠莉ちゃん……」

目を見開いたお父さまは、力のこもった眼差しで私の手をとった。

「今度こそ、颯志を幸せにしてやってくれ」
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