かりそめ婚!?～俺様御曹司の溺愛が止まりません

「……ごめん。父さんと瑠莉ちゃんの話を聞いてしまったんだ」

私の葛藤を暴かれた気がして、返事をすることも出来ずに、目線を漂わせる。

「……少しだけ庭を歩いてみない？　バラが綺麗に咲いているから」

沙之くんは私を気遣うように微笑み、園庭に連れていってくれた。

神楽邸の園庭は、建物をぐるっと取り囲むように広がっており、どこも美しく手入れが行き届いている。

今の季節はバラだけでなくいろいろな種類の花が咲き乱れていて本当に優雅だ。

レンガの遊歩道を歩きながら、沙之くんがうしろめたそうな声で切り出した。

「……あんな話を聞かされても、瑠莉ちゃんは兄貴と結婚するの？」

沙之くんは屋敷の裏の、建物の陰になったところにあるベンチに腰かけて、心配そうに私を見上げる。

結婚できない――なんて言えない。結婚をやめれば、颯志くんだけじゃなく、お父さまも、お母さまも落胆させてしまうことだろう。