Typhoon Of Love
⑪ (叶美サイド)
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彼が顧問と共に更衣室に向かったところで、私たちはスタンドに向かった。





吉井くんは予選を一位で通過し、決勝に進んだ。
しかし、吉井くん最大のライバルである高3の黒木大輔は吉井くんに0.08秒の差で二位につけていた。
こうなるとどちらが勝ってもおかしくない。


男子100m決勝。4コースに吉井くん、5コースに黒木くん。
位置につく前に、吉井くんは私たちの方に手を振ってくれた。
それに答えるように私たちも大きく手を振った。


そしていきなり真剣な表情になった。
選手の顔になった。



『位置について』



吉井くんは準備をし、ピストルがなるのを待った。



『ようい』



私たちは息を飲んだ。



――パンッ



ピストルの音が会場に響いた。

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