マイ・ディア・タイガー
タイガー アンド リリィ
思い返せば、私はいつも先輩のからかいやすい遊び道具だったような気がする。
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虎の頭と書いてコトウと読む少し厳つさが表れる苗字に、薫という非常におしとやかで中性的な名前を持つ私の先輩は、今日も今日とて絶好調だ。
「四條。ドリンク足りてねえぞ、ちゃんと仕事しろコラ」
「えっ…や、急いで用意はしてるんですけど他の先輩方がもう帰ってしまって今は私一人で…」
「知るかあんなクソ女共。悲しいけどうちのマネでマトモなのは百歩譲ってお前だけだ」
いいから早くドリンク用意しろや、と冷たい視線を私に突き刺しながら、校庭横の水道で顔を洗い、私の首からタオルを奪い取って容赦なく顔面の水滴をゴシゴシと拭き取っていた。
「あ…!」
「効率よく働けよ」
下ろしたての私のト◯ロのフェイスタオルが…。
四條莉々子、まだ13歳にもなってない。中学に入ったばかりで既に上下関係の厳しさを身をもって感じております。
その一番の元凶というのがこの、虎頭先輩である。
虎頭先輩は正直、めっちゃ恐い。
最初はとにかく、中学に入ったばかりの私にとって、『2つも上の3年生』というだけでも恐かった。
加えて、見た目は厳ついわけではないけど背が高くて威圧感がある。
男の癖に艶やかな黒髪はとてもサラサラしていて爽やかそうだし、涼やかで頭が良さそうな顔をしていて実際頭がいいのに、口が悪い。
でもいつも女の先輩たちは虎頭先輩に媚びているし、後輩も遠目から見惚れている。
同性の友達が多いし後輩には「トラ先輩」と呼ばれ慕われているから性格は悪くはないと思うが、それでも言い方に棘があるので私は少し苦手だった。