マイ・ディア・タイガー
秋になり、冬になり、受験シーズンになっても、虎頭先輩はちょくちょく部活に顔を出していた。
虎頭先輩は、他の先輩達より一足先に推薦で高校に合格が決まった。
県内で五本指に入る地元の進学校で、サッカー部のレベルも公立高校の中では高い方である。
いつの間に推薦の準備をしていたのか、田中先輩から聞いてその事を知った。
先輩が部活に顔を出した日や、偶然道で見かけた時は一緒に帰った。
先輩の受験勉強の妨げになるのでは、と少し心配したが、それだったら先輩は先に帰るだろうなと何となく思った。
しかし、先輩の受験状況を何となく気になっていたのだ。直接本人に聞くには恐れ多くて、私が勝手に気になっていたところ、ちょうど田中先輩が教えてくれた。
「先輩、田中先輩から聞きましたよ。水高合格おめでとうございます」
下校中、隣を歩く虎頭先輩にそう伝えると、先輩は「おー」と気の無い返事だけした。
何なんだよ、と普通ならその返事に違和感を持つかもしれないが、虎頭先輩と知り合って約10ヶ月。
虎頭先輩の反応にも慣れ、どういう時にどういう反応をするかなども何となく想像できるようになってきた。