マイ・ディア・タイガー
「せ、先輩。どうしたんですか」
「どうしたって、帰るんだよ、俺も」
「でも親御さんは?一緒に帰らないんですか?」
「あー、置いてかれた」
「ええっ」
「最後まで、通学路を歩いて帰れって。チャリないとか、しんどすぎるわ」
「そ、そうでしたか…」
先輩は当然のように私の隣に立った。
そしていつものようにゆっくりと私に歩調を合わせて歩き出す。
よかった。
最後にもう一度、虎頭先輩と帰れる。
「先輩の学ラン姿も、今日で見納めですね」
「水高も学ランなんだけど」
「そうですけど、でも、中学の学ランは最後じゃないですか」
「そんな変わんねーけどな」
袖が短くなった少し窮屈そうな黒い学ラン。
4月からは、もっと大きな学ランを着て、先輩は高校に通うのだろう。