マイ・ディア・タイガー
「あ、そうだ!選手権お疲れ様でした!」
「あ?あー。選手権か」
「今更ですみません…。優勝は惜しかったけど、でもベスト4なんてすごいです」
今から3ヶ月程前に遡るが、10月末、我が県で高校サッカー選手権の県大会が行われていた。
準々決勝から地元のテレビで放送されていたので、もちろん観た。
当たり前の事だけど、中学と高校じゃ体格も選手層も全然違う。
元々大きい方だった虎頭先輩は、他の人にも大きさは負けていなかった。会う度に身体つきがガッシリしていくなあとは思っていたけれど…すごい。2年生ながら、ぶつかられても倒れたりしない。
テレビ上で観ているとよく分かる。
パスの先にはほとんど虎頭先輩がいる。足の速さも、ボールへの嗅覚も、先輩はとにかくすごかった。
勝てると思ったけど、惜しくも2-1で負けてしまった。相手は優勝常連校で、プロを出す程の有名な学校だ。
だけどその学校とほぼ互角にやり合っていた先輩達もすごい。
虎頭先輩の活躍は次の日の新聞にも写真付きで載っていた。誰が見ても先輩の活躍は大きかったのだ。
「ベスト4なー」
でも先輩は納得していなさそう。
「先輩?あんまり嬉しくないですか」
「まあ優勝目指してたしな。まだ来年あるけど、先輩達は卒業だしまたチームがガラッと変わるから、去年より気合入れないとなー」
「そ、そうですよね」
そりゃあそうだ。先輩はそんな事で満足する人じゃない。人に厳しく、それ以上に自分に厳しく、努力を惜しまない人なのだ。
やっぱり先輩は、もう本当にすごい。
「先輩。応援してます」
「おー、ありがと」
「私も受験頑張ります!」
「おー、何かよくわかんねえけど頑張れ」
こんなに頑張っている先輩を見ていると、いかに自分がだらけているかがわかる。
私は先輩みたいに胸を張れることが何もない。
せめて、目標に向かって出来る事はやりきらないと。
そうやって、こうして先輩の隣を歩いても堂々と自信を持っていられるような、そんな人になりたい。