マイ・ディア・タイガー
秋になって、今年も選手権の時期になった。
先輩のチームは順調に勝ち進み、今週末が準決勝、来週が決勝戦となる。
先日中学の後輩の波瑠ちゃんから、「試合観に行きませんか?」とお誘いの連絡が来たので、一緒に観に行く事となった。
他にも中学のサッカー部員や、私と同学年の元サッカー部員も先輩達の雄姿を観に行くらしい。
「四條さん。…大丈夫?」
「えっ?あ、ごめん、ぼーっとしてた」
「ずっと作業してるもんね。少し休もうか」
放課後同じ委員会の真島くんとクラス全員に配る冊子を綴じていた。
日が沈むのが早いので、外は結構暗い。
真島くんは静かな男の子だ。
私は性格上、こういった静かな落ち着いた男の子の方が話しやすい。
なのでサッカー部のマネージャーをしていた時はそれなりに覚悟が必要だったけれど、虎頭先輩がいたからそれどころじゃなかった。
今思うと懐かしいなあ。
「真島くんって何部だっけ?」
「俺?パソコン部」
「パソコン部って何するの?」
「あー、検定受けたり、プログラムの練習したりかな」
「へえ。かっこいいね」
「いやー、サッカー部とかに比べたら陰キャ集団だって言われてるよ」
「そんな事ないでしょ」
真島くんは真面目そうに見えて、真面目なんだけど堅すぎないから意外と話しやすい。だから彼とは普通に話せる。
変に緊張したりしないで、普通に。
一緒にいて胸がしめつけられたり苦しくなる『好き』は、正しいものなのだろうか。
幸せな恋と呼べるのだろうか。辛いだけじゃないのか。
私には未知すぎる世界の話で、それ以上考えるのが怖くなった。