マイ・ディア・タイガー



 土曜日に試合会場へ向かうと、波瑠ちゃんが待っていた。


「先輩!お久しぶりです」

「波瑠ちゃん、久しぶり!」

「もう皆先に会場入ってますよ。行きましょ」


準決勝とあって、会場は関係者だけでなく、地元の人や他校の生徒、大学生、大学やプロのスカウトマンらしき人も見えた。



「私、ちゃんと虎頭先輩見るの初めてなんですよね」

「あ、そっか。先輩目立つから、すぐ分かるよ」

「先輩は虎頭先輩と結構会ってるんですか?」

「会ってるっていうか、バイト先のコンビニに部活帰りに寄る事が多いから…でも、最近は忙しくてあんまり話もしてないよ」

「そうなんですか…寂しいですね」

「いやいや。そんな事全然ないよ」


きちんと整備された緑の芝生を眺めながら、力のない声で言葉を返す。

中学生の時はこんなにきれいな場所でプレーした事はなかったなあ。

ここはプロも試合をするようなスタジアムだ。
先輩はそんな場所でこれから試合をする。



「あっ、始まりますよ!」


水高と、去年の県大会優勝をした学校が向かい合って整列する。

それだけで会場中の空気が切り替わった。


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