マイ・ディア・タイガー
先輩はやっぱりすごい。
何度見ても、いつも必ず「今まで」を超えてくる気がする。
何度見ても、私は先輩に引きこまれる。
今年の優勝有力候補と言われている対戦相手にも引けを取らない試合をし、前半は0-0でハーフタイムに突入。
後半が始まって15分で、嵐が起きた。
虎頭先輩が相手の選手と、激しく接触した。
私は目の前の出来事に何が何だか分からなくなってしまって、ただ動けずに、脚を抱えて倒れる先輩に何人もの大人が駆け寄って行くのを見ている事しかできなかった。
先輩は誰よりも自分に厳しくて、ストイックで、ケガには人一倍気をつけていた。
中学生の時から、先輩がケガをしたところを見た事がなかったから、何故だか先輩はケガをしないと思い込んでしまっていた。
先輩はそのままフィールド場外へ運ばれ、試合に戻る事はなかった。
そこから明らかに試合の流れは変わり、完全に相手チームにペースを掴まれた。
結果は1-0で負けてしまった。
水高側の空気は良くなかったが、それよりも、いなくなった虎頭先輩を心配する声もあった。
先輩は、いつも堂々と立っている人。
大きな背中を、いつも見てきた。
だから、先輩があんな風に、うずくまっている姿を初めて見た。