マイ・ディア・タイガー
1週間が経った頃、先輩は松葉杖で身体を支えながらバイト先のコンビニにやってきた。
試合後先輩に何と連絡をしていいかわからなかくて、散々悩んだ挙句「具合はどうですか?」とだけメッセージを送ったけれど、返事はなかった。
だから突然の先輩の姿にとても驚いた。
「え…靱帯損傷?」
「うん、まあ」
「そんな、大丈夫なんですか!?リ、リハビリとかは」
「リハビリはするけど、まあ、これで部活も引退だしな」
「先輩…私あと5分で上がるので、少し待っててもらえますか」
先輩は、脚のケガ以外いつもと変わりないように見える。
けれど私は、あの日の先輩の姿を浮かべてしまう。
急いで制服を着替えて外に出ると、前の様に先輩は縁石に座って待っていてくれた。
「先輩、お待たせしました!ていうか先輩、お家までどうやって帰るんですか?」
「歩いて帰るよ」
「え!?先輩の家って遠くないですか!?」
「あー…まあ、うん」
「私、送りますから!」
「え、や、いいよ別に」
「無理です、先輩一人で帰せませんって!」
こんな先輩を一人で帰すなんてできるわけがない。
先輩にどんなに断られようと、この件に関してはどうしても引けなかった。
そんな私に対して諦めたのか、先輩は「わかったよ」と渋々ゆっくりと歩き出した。