マイ・ディア・タイガー
2年生になってから、私は去年より真島くんと仲良くなった。
真島くんは去年から同じクラスで、同じ委員会に所属している。
去年は委員会の関係で当たり障りのない会話を交わした程度だったけれど、今年はクラスの席が近くなった事もあって関わる事が増えた。
「真島くん、数Bのプリントやった?」
「やったよ。どこ?」
「う…いつもごめん。ここ教えてください…」
真島くんは理数系に強くて、席が前後になったのをきっかけに勉強をよく教えてもらう様になった。
先生以外の誰かに勉強を教えてもらう時、虎頭先輩に勉強を教わった時の事を思い出す。
真島くんの教え方は、何となく虎頭先輩に似ている。
だからなのかは分からないけれど、真島くんに対して、結構気を許していた。
そして、日照時間が短くなりどこか寂しさが漂う10月の金曜日の放課後。
「俺、四條さんの事好きなんだけど、その…」
「えっ」
「その、あの…」
その先の言葉は中々真島くんから出てこなかったけれど、そんな事より私は異性から初めて「好き」だと好意を向けられて正直めちゃくちゃ舞い上がった。
と同時に、先輩の事が頭を過った。
先輩に想われる事もないのに、こうやって事あるごとに先輩を浮かべてしまう自分が嫌だ。
これ以上不毛な想いが大きくなる事が怖い。自分だけ、特別な感情を持って虎頭先輩に接するのは辛い。
そんな自分勝手な感情を初めて抱いてどうしていいかわからず、そんなタイミングでもらった真島君の言葉は素直にとても嬉しくて、その瞬間から私の目に映る真島くんの姿は大きく変わって、私は真島くんと付き合い始めた。
単純すぎる。ちょろいな、自分。
そう思いつつ、全てが未熟な私は初めての彼氏に本気で浮かれた。
放課後一緒に勉強して、一緒に帰って、休みの日に二人で会う。
そうしていると、前よりも虎頭先輩の事を考える時間が少なくなったと思う。
自分を好きでいてくれる人がいるって、なんて幸せな事なんだろう。
ずっと自分に自信が持てなかったけれど、少し、自分に自信が持てた気がした。