Shooting☆Star
コンサートの後にも関わらず、レッスン室で散々踊り倒して、もう流石に今日は終わりにしようと時計を見る。既に22時を回っていた。
ゴミを捨ててくると言って出ていった百香は、結局、レッスン室に戻って来なかった。
デスクで仕事でもしているんだろうか?と事務所を覗くと、百香はソファーで眠っていた。
ダイチが静かに上着を百香の身体に掛ける。
「僕、モモちゃんが寝てるの、初めて見たかもしんない。」
「マジで!?」
拓巳の言葉に、ダイチは驚いた。
祐樹がうんうんと頷く。
「まあ、確かにモモって寝ないよな。寝てても寝てるとこ見せないっていうか…」
「珍しいよねぇ。」
起こすのも申し訳ないし、先にシャワー浴びて帰ろうか…などと話していると、ふいに百香が目を開ける。
「ん…今何時?」
もにゃもにゃと寝返りを打つ百香に、祐樹が「22時25分」と声を掛ける。

突然聞こえた祐樹の声に一気に目が醒める。
「!!!!」
ガバッと起き上がり、そこが事務所だということを思い出して、百香は思わず両手で顔を覆った。
「まって。え、まって、」
今、無意識に、ダイチのことを呼んだ気がする。
自分にかけられた上着からダイチの匂いがする。目の前にダイチの顔が見えて、寝惚けたまま一瞬ここをダイチの部屋と錯覚したのだ。
「モモちゃん、どうしたの?」と、拓巳が声をかける。
指の隙間から3人を眺めると、困惑顔の拓巳の後ろで、ダイチと祐樹が笑っていた。笑い過ぎて声になっていない。
「っっは!モモ、疲れ過ぎだろ。」
「いやいや、付き合わせたの僕達だし。モモちゃん、ごめんな。」
後ろの2人はともかく、拓巳に寝姿を見られたのが恥ずかしくて、百香は耳まで赤くなった。
バレてないよね…?
「……ちょっと、ショックが大きくて、現実を受け止めたくないんだけど。」
やっとのことで百香がそう言うと、拓巳は「えぇぇ…」と引いた声を出した。
「モモちゃん、もしかして、そういうの見られるの嫌なタイプ…?今更?」
「嫌、っていうか、ふつー無理でしょ。職場で寝惚けた姿見られてんのよ…むり…」
あああ…と、声を出して、「忘れて…」と続ける。
「モモ可愛いー!」と茶化す祐樹。
ダイチが笑いながら「わかった。わかったよな、拓巳。」と、拓巳の肩を叩く。
「わかったなら、とっととシャワー浴びて帰るぞ。」
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