Shooting☆Star
ダイチのマンションの前に車を停め祐樹は自分も車を降りた。
車の後ろにまわり、トランクを開けてダイチの荷物を降ろす。
車から降りたダイチは、車内に落ちた物を拾う振りをして、百香にキスをした。
そっと扉を閉める。
祐樹はトランクを閉めながら「ダイチ、じゃあ、明日な!」と、声を掛けて、再び車に乗り込む。発進してすぐにミラーをチェックすると、少し離れてさっきの車がついて来ているのを確認した。どうやら、こちらの思惑通り、相手はターゲットを変えたらしい。
「なあ、モモ、本当にいいのか?」
「ん?どういう意味で?」
「嘘でもオレの女になること。」
「んー。それでダイチを守れるなら、仕方ないかな。」
「仕方ないってなんだよ…」
百香の言い方に、祐樹は苦笑する。
そりゃ、モモはオレのこと、好きでもなんでもないんだから当たり前か…。
お互いに秘密を打ち明けてから1週間、仕事中の百香はいつも通りに祐樹に接していた。
仕事中でなければ前よりもずっと表情豊かだし、よく喋る。
共有する秘密が大き過ぎて、本音を隠すようなこともない。控えめに言って、素直。
モモって案外、無防備なんだな……。
そんなことを思いながら、一番近くに見えたコンビニの駐車場に車を入れた。
ダイチのマンションから、数分も離れていない。
「モモ、助手席に移動して。」
「今?」
「今。」
そう言って、祐樹は内側から助手席のドアを開ける。
百香が乗り込むと、もう一度、ミラーに映る後続の車を確認する。
今、撮ったな。
二人きりになって、わざわざ近い席に移動させる。
特別な関係じゃなければしないことを、特別に見えるようにする。
撒いた餌に獲物が食い付くのを確認して、祐樹は、にやけそうになる。
百香は助手席で、スマホを操作していた。
どうやらカレンとメッセージをしているらしく「明日、オフだから一緒に行けるって」と、こちらを見ずに報告してくる。
「OK。これで役者は揃ったわけだ。」
祐樹の芝居がかったその言い方に、百香が笑いながら大袈裟な相槌を打つ。
「ヘマしないでくれよ、相棒。大事なひとの人生が掛かってるんだ。」
ま、オレの大事なひとは、今、隣で笑ってるお前なんだけどな。でも、今はフリでもいい。そばに居れるならそれで。
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