Shooting☆Star
記事の通りだと、百香は言った。
祐樹は百香と付き合っていて、ダイチの彼女のカレンとは幼い頃から交流がある為、仲が良いのだと。
3人はそう言って、残りのメンバーに黙っていたことを詫びた。
結局、たいした説明も得られず、秀のもやもやした気持ちも収まらないままだが、深く追求したところで百香は困惑した顔をするだけだろう。
差し替え分のラジオの収録はさほど時間が掛からずに終わり、片付けも終えて一服しようと非常階段に出る。
街の灯りは夜空を明るく照らすが、まだ低い月はそれに負けないくらい赤く、存在感がある。
踊り場の柵に肘をつき、月を眺める。
煙草に火を点けたところで、閉まったばかりのドアが開いて圭太が顔を出した。
圭太は黙ってこちらに来ると、秀の足元の階段に腰掛ける。
「吸うか?」
そう言って煙草のパッケージを差し出した秀を見上げて「いや、いいよ」と圭太は首を振った。
圭太は視線を前に戻して「秀、モモちゃんを怒らないであげて……」と、呟く。
黙って煙を吐きながら遠くを眺める秀に、圭太は続ける。
「モモちゃんに何があったのか、ボクにはわからないけど。きっとモモちゃんにはモモちゃんの考えがあるんだと思う。」
「圭太も、違和感あった?」
「うん。今朝、訊いてみた。でも、モモちゃん“大丈夫”としか言わないから。」
「大丈夫……か。」
「うん。」
「モモがそう言うなら、きっと、社長の考えだよな。」
そうでなかったら、百香はあんな目をしないだろう。
「秀、モモちゃんは、ボク達のこと裏切ったりしないよ。」
圭太はこちらを見上げて「だから、そんな顔するなよ」と言う。
「おれ、そんな顔してるか?」
「うん、してる。“裏切ったな”って顔に書いてある。」
圭太は笑いながら「やっぱり、それ1本ちょうだい?」と、手を出してくる。
「メンソールだけど。」
そう言って秀はポケットから煙草を取り出してパッケージごと圭太に渡す。
咥えた煙草に火を点けて、吐き出した煙が夜空に溶けるのを眺めてから圭太は言った。
「本当でも嘘でも、一番苦しいのはモモちゃんだ。ボク達が出来ることは黙って見守るくらいだよ。」
確かに、圭太の言う通りだ。
こちらに背を向けて座る圭太を真上から見下ろす。
「圭太、もしかして、おれに説教しに来たの?」
あはは、と圭太は笑って頭を後ろに倒すようにして秀を見上げた。
「バレた?……でも、間違ってなかったでしょ。」
秀は吸っていた煙草を揉み消し、灰皿に押し込んだ。
「まあ、な。」
圭太の隣に座って、その吐き出す煙を眺める。
時々、圭太の寛大さや、拓巳の純粋さが羨ましいと思う。
煙は夜空に溶けて、ゆっくりと見えなくなる。
疑心暗鬼になって百香を責めたところで、状況が変わるわけでも納得のいく答えが返ってくるわけでもない。
助けを求められない限り、手を貸すことも、問い質すことも出来ない。
出来ることといえば、いつも通りに仕事をこなし、黙って見守るくらいだった。
祐樹は百香と付き合っていて、ダイチの彼女のカレンとは幼い頃から交流がある為、仲が良いのだと。
3人はそう言って、残りのメンバーに黙っていたことを詫びた。
結局、たいした説明も得られず、秀のもやもやした気持ちも収まらないままだが、深く追求したところで百香は困惑した顔をするだけだろう。
差し替え分のラジオの収録はさほど時間が掛からずに終わり、片付けも終えて一服しようと非常階段に出る。
街の灯りは夜空を明るく照らすが、まだ低い月はそれに負けないくらい赤く、存在感がある。
踊り場の柵に肘をつき、月を眺める。
煙草に火を点けたところで、閉まったばかりのドアが開いて圭太が顔を出した。
圭太は黙ってこちらに来ると、秀の足元の階段に腰掛ける。
「吸うか?」
そう言って煙草のパッケージを差し出した秀を見上げて「いや、いいよ」と圭太は首を振った。
圭太は視線を前に戻して「秀、モモちゃんを怒らないであげて……」と、呟く。
黙って煙を吐きながら遠くを眺める秀に、圭太は続ける。
「モモちゃんに何があったのか、ボクにはわからないけど。きっとモモちゃんにはモモちゃんの考えがあるんだと思う。」
「圭太も、違和感あった?」
「うん。今朝、訊いてみた。でも、モモちゃん“大丈夫”としか言わないから。」
「大丈夫……か。」
「うん。」
「モモがそう言うなら、きっと、社長の考えだよな。」
そうでなかったら、百香はあんな目をしないだろう。
「秀、モモちゃんは、ボク達のこと裏切ったりしないよ。」
圭太はこちらを見上げて「だから、そんな顔するなよ」と言う。
「おれ、そんな顔してるか?」
「うん、してる。“裏切ったな”って顔に書いてある。」
圭太は笑いながら「やっぱり、それ1本ちょうだい?」と、手を出してくる。
「メンソールだけど。」
そう言って秀はポケットから煙草を取り出してパッケージごと圭太に渡す。
咥えた煙草に火を点けて、吐き出した煙が夜空に溶けるのを眺めてから圭太は言った。
「本当でも嘘でも、一番苦しいのはモモちゃんだ。ボク達が出来ることは黙って見守るくらいだよ。」
確かに、圭太の言う通りだ。
こちらに背を向けて座る圭太を真上から見下ろす。
「圭太、もしかして、おれに説教しに来たの?」
あはは、と圭太は笑って頭を後ろに倒すようにして秀を見上げた。
「バレた?……でも、間違ってなかったでしょ。」
秀は吸っていた煙草を揉み消し、灰皿に押し込んだ。
「まあ、な。」
圭太の隣に座って、その吐き出す煙を眺める。
時々、圭太の寛大さや、拓巳の純粋さが羨ましいと思う。
煙は夜空に溶けて、ゆっくりと見えなくなる。
疑心暗鬼になって百香を責めたところで、状況が変わるわけでも納得のいく答えが返ってくるわけでもない。
助けを求められない限り、手を貸すことも、問い質すことも出来ない。
出来ることといえば、いつも通りに仕事をこなし、黙って見守るくらいだった。