Shooting☆Star
事務所のドアを蹴破らんばかりに、勢いよく入ってきた祐樹に胸ぐらを掴まれ、ダイチはそのままソファーに引きずり倒された。
「なんだよ」
肩で息をする祐樹を、抵抗もせずに睨み付ける。
「何やってんだよお前。言っていいことと悪いことくらいわかってんだろ……」
荒い息のまま絞り出すように祐樹が呻いて、ドンとダイチの身体をソファの背もたれに叩き付ける。
開いたままのドアから駆け込んできた百香が、「やめて!もう、いいから!」と、叫んで祐樹の肩に縋るように手を掛けた。
ダイチは祐樹の手から離れて、狼狽える百香に「大丈夫」と手を伸ばす。
その手を払うように祐樹が間に入って「モモに触るな。」と、ダイチを睨んだ。
祐樹は「モモは車に居て」と、百香を事務所の外に押し出すと、中から鍵を掛ける。
少しの間、外からドアを叩き、なんとかして開けようとする気配がしていたが、どうにもならないと気付いたのか、はたまた諦めたのかはわからない。
足音が遠ざかって、ドアの外は静かになった。
「で、ユウは何キレてんだよ」
振り返った祐樹を挑発するようにダイチは声を掛ける。
こうなったら、祐樹が納得するまで向き合うしかない。
「百香から何を聞いたんだ?」
「お前がモモにしたことだ、答える必要ないだろ……」
そう言って祐樹はダイチに掴みかかる。
揉み合って、机にぶつかり、転がって、体格の良い祐樹がマウントを取る形になった。
「結局、お前はモモじゃなくてもよくて、ただ、都合よかったからモモを選んだんだろ!!」
祐樹はダイチに馬乗りになったまま力任せに床に拳を叩きつける。
そうしたところで、怒りのやり場も気持ちの納めどころも無かったが、ダイチを殴るわけにもいかなかった。
抵抗もしないで、ダイチは首だけ横を向く。
祐樹の拳の向こうへと続く事務所の床に、ソファーの脚、転がって割れたマグカップ。その向こうに百香の机…机の足元にスニーカーが一足揃えて置いてある。
ダイチは百香の裸足の小さな足を思い出す。
ベッドの上で毛布にくるまって、足のつま先を少しだけ出す百香の癖。
「……だったら、俺に、どうしろって言うんだよ……俺が、どうしたらお前は満足なんだよ……」
祐樹に対する嫉妬心から百香を突き放して、嫌われるような事を言ったのは事実だ。
祐樹が百香から何を聞いたのか知らないが、“ただ、都合が良かったから”と、祐樹にそう思われても仕方がない。
でも。それでも、百香のことは好きだ。
「……百香のことは、ちゃんと好きだったよ。ふたりでいる時はよく笑うし、俺のこと過大評価しないし。……でもな、多分、百香はずっとマネージャーの顔してたんだ。あいつにとっては、それも仕事だったんだよ。」
「そんなわけないだろ。お前、今までモモの何を見てたんだよ。」
「おまえは知らないだろうけど、百香、俺の前で泣かないんだ。どんなに我慢しても、俺には何も言わない。……おまえの前ではあんなに泣くのにな。」
「それは……」
百香がお前のこと好きだからだろ……祐樹は言いかけて言葉を飲み込む。
百香が泣くのはいつだってダイチが理由だ。ダイチは多分、それを知らない。
自分の好きな女のことですら、知ろうとしないのか……。
嬉しくないな……祐樹は思う。
ダイチのことをずっと超えたいと思っていたのに。
「なんだよ」
肩で息をする祐樹を、抵抗もせずに睨み付ける。
「何やってんだよお前。言っていいことと悪いことくらいわかってんだろ……」
荒い息のまま絞り出すように祐樹が呻いて、ドンとダイチの身体をソファの背もたれに叩き付ける。
開いたままのドアから駆け込んできた百香が、「やめて!もう、いいから!」と、叫んで祐樹の肩に縋るように手を掛けた。
ダイチは祐樹の手から離れて、狼狽える百香に「大丈夫」と手を伸ばす。
その手を払うように祐樹が間に入って「モモに触るな。」と、ダイチを睨んだ。
祐樹は「モモは車に居て」と、百香を事務所の外に押し出すと、中から鍵を掛ける。
少しの間、外からドアを叩き、なんとかして開けようとする気配がしていたが、どうにもならないと気付いたのか、はたまた諦めたのかはわからない。
足音が遠ざかって、ドアの外は静かになった。
「で、ユウは何キレてんだよ」
振り返った祐樹を挑発するようにダイチは声を掛ける。
こうなったら、祐樹が納得するまで向き合うしかない。
「百香から何を聞いたんだ?」
「お前がモモにしたことだ、答える必要ないだろ……」
そう言って祐樹はダイチに掴みかかる。
揉み合って、机にぶつかり、転がって、体格の良い祐樹がマウントを取る形になった。
「結局、お前はモモじゃなくてもよくて、ただ、都合よかったからモモを選んだんだろ!!」
祐樹はダイチに馬乗りになったまま力任せに床に拳を叩きつける。
そうしたところで、怒りのやり場も気持ちの納めどころも無かったが、ダイチを殴るわけにもいかなかった。
抵抗もしないで、ダイチは首だけ横を向く。
祐樹の拳の向こうへと続く事務所の床に、ソファーの脚、転がって割れたマグカップ。その向こうに百香の机…机の足元にスニーカーが一足揃えて置いてある。
ダイチは百香の裸足の小さな足を思い出す。
ベッドの上で毛布にくるまって、足のつま先を少しだけ出す百香の癖。
「……だったら、俺に、どうしろって言うんだよ……俺が、どうしたらお前は満足なんだよ……」
祐樹に対する嫉妬心から百香を突き放して、嫌われるような事を言ったのは事実だ。
祐樹が百香から何を聞いたのか知らないが、“ただ、都合が良かったから”と、祐樹にそう思われても仕方がない。
でも。それでも、百香のことは好きだ。
「……百香のことは、ちゃんと好きだったよ。ふたりでいる時はよく笑うし、俺のこと過大評価しないし。……でもな、多分、百香はずっとマネージャーの顔してたんだ。あいつにとっては、それも仕事だったんだよ。」
「そんなわけないだろ。お前、今までモモの何を見てたんだよ。」
「おまえは知らないだろうけど、百香、俺の前で泣かないんだ。どんなに我慢しても、俺には何も言わない。……おまえの前ではあんなに泣くのにな。」
「それは……」
百香がお前のこと好きだからだろ……祐樹は言いかけて言葉を飲み込む。
百香が泣くのはいつだってダイチが理由だ。ダイチは多分、それを知らない。
自分の好きな女のことですら、知ろうとしないのか……。
嬉しくないな……祐樹は思う。
ダイチのことをずっと超えたいと思っていたのに。