Shooting☆Star
ダイチはドアの外の百香を思う。
百香の目は赤く腫れ、浮腫んだ頰にタオルの跡が付いていた。
百香はどんな風に涙を流すのだろう……?
知らないことばかりだ。
知りたいと言いつつ、見ようともしなかったこと。知ろうともしなかったこと。
本当の百香の気持ち。
--手を抜いているんだから、逃すのは当たり前。--
ふと、いつかの百香の言葉を思い出す。
--でも、ダイチ、本気でやらなかったんでしょ。--
--今更、後悔してる。--
百香を“普通”の世界に連れ出したのは祐樹だ。
ダイチにはそれがよくわかる。
手を繋いで外を歩くこと、他人の目を気にせずに笑い合うこと。相手に不満をぶつけることも、我慢をせずに涙を見せてもいいってことも……どれもダイチが百香に許してこなかったことだ。
ダイチは二人の世界を望んだだけだ。
誰からの目にも晒されない、閉塞された部屋の中で外なんて気にせずに、ただ寄り添っているだけでよかった。
それを百香も望んでいるかどうかなんて考えたこともなかった。
たまたま手に入れたあのチケットを気紛れに出した時、百香が嬉しそうに笑ったのを、ダイチは悪くないと思った。
百香が笑うなら、たまには外に出るのも悪くない。そう思ったのは事実だ。
あの日、失うことを恐れて百香を手放し、祐樹に預けたのは自分だ。
--何があっても、ずっと一緒に居てくれる?--と問う百香は、いつかやってくる“何か”を乗り越えないといけないことに気付いていたのだろう。
あの時、百香を離さないでいたら。
恐れずに、百香との関係を公にしていたら。
この未来はどうなっていたのだろう……?
百香は笑っているだろうか?
祐樹は、親友を憎まずに済んだだろうか?
俺は、百香を失わずにいるだろうか……?
ぐるぐると考えて、ふと、違和感を覚えた。
「……ユウ……おまえ、いつから百香のこと好きなんだ?」
自分に馬乗りになったままの祐樹の顔を、下から見上げる。
逆光で表情はわからないが、脱色しすぎの髪が蛍光灯の光を反射して金色にキラキラ光っている。
「ずっとだよ。」
祐樹はそう言って、ダイチの横に転がった。
「初めて会った時から。」
予想外の答えに横になったまま無言で、祐樹を振り返る。
「まさか、お前……今更、気付いたの?……マジかよ……やってらんねぇ。」
祐樹はそう続けて、天井を見つめた。
そのまま「なあ、」と、黙ったままのダイチを呼ぶ。
「なあ、ダイチ。オレ、モモ、貰っていい?」
「なんだよ、それ。俺に訊くなよ、そんなこと。」
ダイチは思わず苦笑する。
祐樹はきっと、その真っ直ぐさで本気で百香に向き合うのだろう。
その時、答えを決めるのは、俺ではなく百香だ。
祐樹がいてくれてよかった。
こいつがいなかったら、ズタボロの気持ちのまま、俺はひとりでどうしているのだろうか。
ダイチは祐樹の金色の髪から、天井へと視線を向ける。
「大体、さっき振られた俺に勝ち目ないじゃん。」
百香の目は赤く腫れ、浮腫んだ頰にタオルの跡が付いていた。
百香はどんな風に涙を流すのだろう……?
知らないことばかりだ。
知りたいと言いつつ、見ようともしなかったこと。知ろうともしなかったこと。
本当の百香の気持ち。
--手を抜いているんだから、逃すのは当たり前。--
ふと、いつかの百香の言葉を思い出す。
--でも、ダイチ、本気でやらなかったんでしょ。--
--今更、後悔してる。--
百香を“普通”の世界に連れ出したのは祐樹だ。
ダイチにはそれがよくわかる。
手を繋いで外を歩くこと、他人の目を気にせずに笑い合うこと。相手に不満をぶつけることも、我慢をせずに涙を見せてもいいってことも……どれもダイチが百香に許してこなかったことだ。
ダイチは二人の世界を望んだだけだ。
誰からの目にも晒されない、閉塞された部屋の中で外なんて気にせずに、ただ寄り添っているだけでよかった。
それを百香も望んでいるかどうかなんて考えたこともなかった。
たまたま手に入れたあのチケットを気紛れに出した時、百香が嬉しそうに笑ったのを、ダイチは悪くないと思った。
百香が笑うなら、たまには外に出るのも悪くない。そう思ったのは事実だ。
あの日、失うことを恐れて百香を手放し、祐樹に預けたのは自分だ。
--何があっても、ずっと一緒に居てくれる?--と問う百香は、いつかやってくる“何か”を乗り越えないといけないことに気付いていたのだろう。
あの時、百香を離さないでいたら。
恐れずに、百香との関係を公にしていたら。
この未来はどうなっていたのだろう……?
百香は笑っているだろうか?
祐樹は、親友を憎まずに済んだだろうか?
俺は、百香を失わずにいるだろうか……?
ぐるぐると考えて、ふと、違和感を覚えた。
「……ユウ……おまえ、いつから百香のこと好きなんだ?」
自分に馬乗りになったままの祐樹の顔を、下から見上げる。
逆光で表情はわからないが、脱色しすぎの髪が蛍光灯の光を反射して金色にキラキラ光っている。
「ずっとだよ。」
祐樹はそう言って、ダイチの横に転がった。
「初めて会った時から。」
予想外の答えに横になったまま無言で、祐樹を振り返る。
「まさか、お前……今更、気付いたの?……マジかよ……やってらんねぇ。」
祐樹はそう続けて、天井を見つめた。
そのまま「なあ、」と、黙ったままのダイチを呼ぶ。
「なあ、ダイチ。オレ、モモ、貰っていい?」
「なんだよ、それ。俺に訊くなよ、そんなこと。」
ダイチは思わず苦笑する。
祐樹はきっと、その真っ直ぐさで本気で百香に向き合うのだろう。
その時、答えを決めるのは、俺ではなく百香だ。
祐樹がいてくれてよかった。
こいつがいなかったら、ズタボロの気持ちのまま、俺はひとりでどうしているのだろうか。
ダイチは祐樹の金色の髪から、天井へと視線を向ける。
「大体、さっき振られた俺に勝ち目ないじゃん。」