Shooting☆Star

☆3話☆

あの時、百香は何故、弘也を庇ったのだろう……?
あれからもう10年以上も経つというのに、百香の行動の真意はわからないままだ。
弘也は「幸せにならないとか、許さないからね。」と泣きながら笑う百香の横顔を、代表に向かって微笑む怒りと悲しみに満ちたあの百香の姿を、一生忘れないだろうと思う。
あれから弘也は、百香の負担が少しでも減るように、率先して雑用を手伝うようになった。
百香の言う事を聞かずふざけがちな拓巳や祐樹を叱り、圭太や秀の話に耳を傾け、ダイチを引っ張る。
「ありがとう」という言葉だけでは足りないと思った。
百香が弘也の為に動いたように弘也も動こうと思った。


「あれは社長よりもモモが凄かったんだよ。」
「百香が?」
「モモがいなかったら、ぼく、辞めてたと思う。」
チョコレートを齧りながら、そう言った弘也の言葉に祐樹が驚いた声を上げる。
「辞めてた?なにそれ。そんなの初めて聞いたよ……。」
「モモがあんなに怒ったの、あの時くらいじゃないかな?」
「えっ、モモちゃん、よく怒ってるじゃん?」
拓巳が不思議そうに弘也を見る。
「それは拓巳、お前が百香の言う事聞かないから叱られるんだろ?」
「いや、違うんだよ、あれは。そういう次元の怒るじゃなくて……何というか…魔女みたいだった。お伽話の悪い魔女。いつもみたいに笑っていて、だけど、背中から怒りが見えた。」
弘也は、もう、百香があんな顔をすることがないようにと願う。
それくらい、怒りと悲しみに満ちた笑顔だった。
「ぼく、辞めるつもりだったんだよ。茉莉子と一緒に居るには、それ以外、選択肢ないと思ってたし。」
そう言って弘也は苦笑する。
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