Shooting☆Star
思えば、最初から、百香は怒っていた。
動揺した弘也の、後先考えない発言に。
弘也をクビにしようとした社長に。
妊娠を隠そうとした甘い考えの茉莉子に。
世間の目を気にして思考停止して、幸せになる方法を考えずに選択肢はないと言い切った弘也達に、百香はずっと怒っていたのだろう。
「社長もクビだって言ったのに、モモはそれを反対したんだ。貴方達のことは私が守るから、辞めなくていい。辞めさせるなら、私も辞めます、って。」
「モモちゃん超カッコイイじゃん。それって、ヒロくん、助けてもらったんでしょ?じゃあ、モモちゃんは良い魔女なんじゃない?」
「でもさ、あの頃、ただのマネージャーだったんだよね。まだ2年目の22歳の女の子だよ。あの時、モモ、茉莉子の事務所の代表にまで噛み付いて、契約までうちに変えさせたんだよ。社長は反対してるっていうのに。」
意味わからないだろ?そう言って何杯目かの甘そうなカクテルを飲む弘也を見て、ふと、思い出したようにダイチが笑う。
「それ、仕事だからだよ。」
「え?」
「百香にとっては、それが仕事だからだよ。万が一があった時にタレントを守るのがマネージャーの仕事だって、前に百香が言ってたんだ。多分、他に理由はないよ。」
そう言って、ダイチは氷だけになったグラスをカウンターに向かって掲げて見せる。
「な、マスター。そうだろ?」
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