Shooting☆Star
どれくらい経ったのだろう、長くも短くも感じる沈黙の後で百香が小さな声で呟く。
「ねえ…これは、私のひとりごとなんだけど。」
まるでシンクに吐き出すように、百香は続ける。
「私ね、あの時、私も一緒に部屋に居たんだ。私がカレンちゃんを呼んだの。」
ああ、相手はダイチだったのか…
祐樹は事務所の隅に積まれた雑誌の束に視線を向ける。
「どうして私じゃなかったの…。一緒に居たのは私だったのに。どうしてカレンちゃんなのかな…。」
「…うん」
望まれてないとわかっていたけど、祐樹は小さく相槌をうつ。
「ずっと、ずっと…何年もこのままで…いつまで隠せば良いのかな……」
「…うん」
「いつか、ちゃんと、隠さなくても良い日が来るのかな……」
「…わかんないけど。オレには、もう、隠さなくていいよ。」
ダイチは、いつだって完璧すぎる。
敵わないな。歌もダンスも、殆どの遊びも。おまけに恋もか。
何か一つでも追い越したくて、頑張れることはやってきたけど。
それでも他の奴に取られるよりはずっとマシだと思う。
ダイチの隣で笑う百香なら、簡単に想像出来る。
「これは、オレのひとりごとなんだけど。」
百香が顔を上げて祐樹を見る。
「どんな恋でも、報われるべきなんだ。」
「それって、ユウくんの恋も?」
泣きながら笑う百香に、祐樹は黙ってタオルを投げる。
「気付かなかったな。ずっと側にいたのに。」
受け取ったタオルに顔を埋めながら、百香はモゴモゴと呟いた。
「それは、仕事だったからだろ?」
「でも、気付かなかったでしょ?ユウくん達、20年もずっと側にいるのに。」
祐樹は家族よりも長い時間を共に過ごしてきた親友を思い浮かべる。
まあ、確かに。気付かなかったな。
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