恋のリハビリ ~ 曖昧な関係に終止符を
『とりちゃん……早いよ』
完徹明けで夕方やっとベッドへダイブした所に
激しく鳴り響くチャイムに起こされて
まだ集合時間には3時間もあるのに
ギリギリまで寝られるように……って
ハイヤー予約した意味ないじゃない
『まだ寝ていたのか』
『放っといてくれ。
どーせ俺は才能に見放されてますよーだ』
あのアレンジャー、
ぜってー俺のこと逆恨みしていやがる。
てめぇをフッた女が俺になびいたってだけの
ことだろ。
あぁ、アホくさ。
『ったくもう、仕方ねぇな ――』
……うん
仕方ないからもう少し寝かせて
意識も朦朧として、あぁ、も少し寝れる……と
思った瞬間
『ほら。グイっと一気にいけ』
テーブルに用意されたレッドブル
起きろ……って事な。
時間には細かいマネージャー氏・羽鳥 洵
(はとり まこと)
だからって……まだ間に合うってば
でも
こうなったら起きるしかない
ため息と共に重い体を起こす、
自称:人気アーティスト、羽柴 清貴・34才。
『んん。ありがとね』
眠気の覚めない頭を必死で起こして
エナジードリンク一気飲み。
『―― ぷはぁぁ……きくぅ……』
「フッ ―― 完徹明けはこれに限るのさ」
あながち外れてないから、怒れない。
「んじゃ。仕度すっから適当に待ってて?」
「あぁ、早くしろ」
だーかーらぁ、早くしなくても間に合うって。
「オッケー」
いちいち反論するのもめんどうで。
大人しく言うことを聞くことにした。
あぁ……そうか
羽鳥は結城センセに会うの、
大阪支社以来なんだっけ。
あんな慕ってたのに、
人事異動で疎遠になって、
全然会ってなかった言うてたし
だからこんなに早くから ――
そう考えると。
ま、仕方ない……か、って気持ちになった。