Beast Love
「だ、大丈夫ですか?」

幸い、笑い声でごった返す教室内では、女子生徒ひとりが泣いていることに気づいている者は他に誰もいない。


ハルカくんが座っていた椅子から立ち上がり、慣れた手つきで頭を撫でてあげている。


「ごめんなさいっ、急に泣いたりして。もう金輪際、貴方たちに迷惑かけないって約束するから……今日は、ありがとう……っ」

慌てて涙をセーターの袖口で拭えば、彼女はそのまま早足で教室から出て行ってしまった。


……っていうか、なんだこの……

「…………中途半端に巻き込まれて、なんだかモヤモヤするっ!!」


胸に発生した痒いところに手の届かない気持ちの悪さを表すかのように、ワシャワシャと両手の指をばらばらに動かしていると、ハルカくんに「わー、なにその動き。気持ち悪〜い」っと突っ込まれる。


「こうなったら、とことん巻き込まれてやろうじゃないの! 白黒ハッキリしないと、なんだか気が済まないっ」


と言うわけで、元バスケ部とバスケ部マネージャーの複雑な関係を解消するために私が足を運んだのは……
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