Beast Love
「オラッ! 早くかかって来いやぁ!!」

玄武くんのことをよく知っていそうな、鳳凰 正人…………なんだけども。


彼を探して校舎内を散策して、威勢の良い声が聞こえてきたかと思えば。


目的の人物は校舎裏で、何故か別クラスのイカツイ男子と殴り合いの喧嘩をしていた。

一緒にマサトを探してくれたハルカくんと共に、壁から顔を覗かせて、その光景にごくりと唾を飲み込む。

「えぇ〜……。あの人、なんで昼休みに喧嘩なんてしてるの……」

「アハハー。マサトくん、相変わらず元気だねぇ」


辺りには拳が骨を殴り合う鈍い音と、鉄くさい血の香りが広がっていた。


やがて、イカツイ見た目の男子生徒が「わ、悪かったよ、やめてくれ」っと泣き言を言いだしたため、頬を殴られ口の端から血を流すマサトが、雄々しいオーラを纏いながら動きを止める。


「テメェから売ってきたケンカだろ、もう終わりかよ。情けねぇなぁ。今度ぶつかっていちゃもんつけてきたら、手加減しねぇぞ」


ペッと血の塊を吐き、ザッザッとこちらに向かって歩いて来る。


(わわっ! コッチ来る!)


バタバタと引き返そうとすれば、コントのようにつまづき、先に逃げようとしていたハルカくんに覆い被さるようにしてズッコケてしまった。


「うわっ!」
「ぐえっ!!」

女の子よりも細い体をしたハルカくんは、巨体に押しつぶされ、アヒルのような呻き声を上げる。


「ああ? なんだ、今の声」

その声に反応し、マサトがこちらに気付いてしまった。

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