Beast Love
「ほっ、ほっ、ほっ」


ゲームが再開され、私はマサトに命令された通りにコート内を縦横無尽に駆け回っていた。


「なんだぁ? アイツ、動きがてんで素人じゃねぇか。おい、あの犬みたいに走り回ってるやつは無視だ!」


大学生たちは私からマークを外し、マサトとパーカーくんふたりに集中する。

そんな敵陣営の油断を、パーカーくんは見逃さなかった。


ボールを巧みに扱い、伸びる手をかわして前を見たまま、真横にパスを出す。


ふわりと優しく弾んだボールは吸い込まれるようにして、私の手の中に飛び込んできた。


「うわわっ! パスが来ちゃった!!」

全く受ける気は無かったのに、まるでボールが生きているかのようなパーカーくんの正確なパス技術に、目を丸くする。


「おい、ポチ! こっちにパス寄こせ!」

ハッと顔を上げると、首にタオルをかけた大学生が私からボールを奪おうと迫ってきており、その背後でマサトがゴールに向かって駆け出していた。


(人が目の前にいるのにパスを通せとか、そんな高度な技術を要されましても、私には無理です!)

「さっさとボールを寄こせや、コイツ!」

乱暴に奪おうとしてくる敵の形相に焦り、私は咄嗟にボールを両足の間目掛けて、手放した。


股下からのワンバウンドパスを、試みたのである。


手から離れたそれは床で1回バウンドし、そして……



「あひぃん!!」


立ちはだかっている大学生の股間に、直撃した。
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