Beast Love
野次馬たちが「ぶふーっ!」っと吹き出す声を背にして、謝罪するべく私はその場にうずくまる被害者に慌てて駆け寄った。


「ご、ごめんなさいすみません!ワザとじゃないんです!!」


お股を抑えて荒い息を繰り返す大学生は、目に涙を浮かべている。

「お、お前、女だったのかよ……」

至近距離で改めてそう確認されなければ分かってもらえないなんて、ちょっとだけ悲しくなった。

こぼれたボールの勝敗はと言うと、マサトが拾い上げてダンクシュートを決め、ガッツポーズを取っていた。



ガコンッ、と激しくゴールが揺れれば、マサトが足を止めている私と大学生に近寄ってくる。


「ポチ公、またやりやがったのか…………」


かつてテーマパークのアトラクションで同じ場所にダメージを受けたことのある彼の顔は、青ざめていた。


「お前さぁ、男の股間になにか恨みでもあんのかよ……」

「ち、違っ! ワザとじゃないんだってば〜っ」



半泣きで弁解しようとすれば、どうやらコートのレンタル時間が終わってしまったらしい。


コート外にいるハルカくんの持つスマホのアラームが、けたたましく鳴り響く。


「はい! 試合終了でーすっ。みんな、中央に集まってねっ」


可愛らしいハルカくんに誘導され、向かい合ってコートの真ん中に並ぶ。


「点数を見れば、勝負は一目瞭然! ……っというわけで、高校生チームVS大学生チームの勝負は、高校生チームの勝ちでーっす!」


勝者が決まると、ギャラリーからは歓声が沸き起こる。


「お前ら、最高だぜーっ!」
「面白いから、毎週勝負してくれや!」


そんな声を聞きながら、大学生たちは気まずそうに早足で立ち去ろうとするも。


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