Beast Love
湯沢コーチは、俺のそんな一瞬の躊躇いを見逃さなかった。


彼は突然、大声で叫び始める。

「だ、誰か来てくれー! 玄武が、俺を殴ってきたんだ!!」


外にはチャイムに促され、下校を始める何人もの生徒たちがいる。

驚愕のあまり、俺の手は湯沢コーチのTシャツから緩々と離れた。

(マジかよ、コイツ……)


「なんだぁ? 今の叫び声」
「体育館じゃね? っつか、喧嘩なら誰か先生呼んで来いよ」


ヤバい、人が来る。

入り口から会話が近付いてきた瞬間、小雪は顔を真っ青にして別の扉から目にも留まらぬ速さで、その場を去っていった。


「なんだぁ、湯沢、玄武! 殴り合いしたのか?!」

運悪く入り口から姿を現したのは、多田顧問だった。

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