Beast Love
***

全ての真実を知らされ、あまりにも不条理な現実に声を上げる。


「そんな……! 玄武くん、何も悪いことしてないじゃない」

私がそう嘆けば、隣にいる白虎町くんが口を尖らせた。


「ほんまそれやわ。って言うか、その湯沢ってコーチまじクズじゃん? 人にパンツの写メ下さいって頼むなら、まず先に自分のパンツの写メあげんのが礼儀ってもんちゃう?」

「違う、白虎町くんそうじゃない。どうしてそうなるの」


視点がちょっとズレてる天然さんにツッコミを入れれば、ハルカくんが少し吹き出していた。


「……で、結局アキラは誰にも本当のこと話してねぇの?」

マサトにそう問われた玄武くんの頭の中には、苦しくも大好きだった部活の思い出が駆け巡っているのだろう。


「ああ。周りになんと言われようが、小雪を守るために俺は沈黙を貫いて、何も反論せずにいた。そんな態度に痺れを切らしたのか、顧問は俺に、こう言ってきたんだ」


『部の規律を乱す者は、例えレギュラーでもウチにはいらんぞ』

苦悶の表情を浮かべる玄武くんは、ギリッと拳を握り締める。


「自分が間違ったことをしているなんて思わなかったし、思えなかった。だから俺は、……意地になって2年の最後に、退部届を提出したんだ」


‪誰かを助けようと足掻いている彼を見て、頭の中で何かがはじけたような感覚が起こる。‬


‪……この人を、”助けたい”と。‬


‪心の奥底にしまいこんでいた情熱が再び燃え始めるような、不思議な感覚。‬




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