Beast Love
けれど、誰かの痛みが思考を穿つ。


”やめて”、と。


”また同じ過ちを繰り返すのか”、と。


ズキズキと、こめかみに痛みが生じる。


(なんだろう、この感覚……。開けちゃいけない箱のふたを開けるような……嫌な感じ)


「で、テメェはどうしたいんだよ?」


威勢の良い声音に、頭痛はかき消された。


顔を上げれば、マサトが仁王立ちで玄武くんの本心を尋ねている。


「俺は、……部活を辞めることを湯沢コーチに伝えたら、こう宣戦布告を受けたんだ。『実力で勝てたら、全部ウソでしたってみんなの前で話してやるよ』って」


それは彼にとって最高の侮辱になっただろう。


実力差は明らかであるのに、その術を失った玄武くんは、例えどんなにバスケが上手くても湯沢コーチの嘘を覆すことは出来ないからだ。


「……俺、すっげームカついてさ。噂で湯沢コーチが時々ここでバスケやってるって聞いて、変装までしてずっと張り込んでたんだ。チャンスさえあれば、バスケでボコボコにしてやるって。そしたらお前らが絡まれてて、思わず助けちまったってワケ」

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