Beast Love
(玄武くん、勝ってこの最低コーチをギャフンと言わせて!)



まるで自分が被害に遭ったかのような、怒り。



必要以上に感情移入してしまうのは私の悪い癖だが、依然としてヘラヘラと笑みを浮かべている男を前にしていると、そんなことを思ってしまう。



落ちる夕日を背景にして、玄武くんは正々堂々と告げる。


「湯沢コーチ、俺と勝負してください。1対1の、3本先取の勝負です。もし貴方が勝てば、俺はもうバスケ部や貴方に一切関わらない。ただし、俺が勝った時には……」


スゥッと酸素を吸う、静かな音。


「小雪に、謝ってやってください」


玄武くんが勝負の戦利品として掲げたのは、そのひとつだけだった。
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