Beast Love
体重の乗った靴底がコートを擦る音と、命を宿したかのように巧みに弾む、ドリブル音。


湯沢コーチは玄武くんが前に出している足をワザとフェイントで同方向に動かし、潰しにかかる。

だが彼も負けじと素早い動きで体制を立て直し、シュートコースを封じた。

湯沢コーチのシュートがゴールから弾かれると、次は玄武くんの攻撃だ。


小刻みなステップや肩の動き、目線と覇気で心理を揺さぶり、プレッシャーをかけ、心ごと身体を釣らせて自分にとって相手を有利に動かす。

前へ前へ、ただひたすらゴールへ。


かと思えば一歩後ろに下がって、正確なジャンプシュートが繰り広げられる。

ジャンプシュートをイメージさせ、今度は相手の前でくるりと回転し、そのままの流れでブロックされることなく風のようにボールをゴールへと放つ。

玄武くんのプレイには、息をのむほどの美しさがあった。

シチュエーションに応じて最高のテクニックを選択する瞬発力と、強い精神力。

熾烈な陣地の取り合いに勝てた者だけが得ることのできる、シュートモーション。

湯沢コーチはパワープレイで。

玄武くんはテクニックで、凌ぎを削る。

「……っ、くそっ!」
「させるかよ!」

1点を返せば、1点を返される。


もどかしい展開に、私は地団太を踏んだ。
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