Beast Love
騒動に決着がつき、一斉に帰り支度を始めたギャラリー達。


雑踏に紛れながら、私もベンチに置いていたカバンを手に取る。


っとそこへ、小走りで玄武くんがやって来た。


「天音さん、色々と世話になったね。ありがとう」


バスケでの実力を見せられ、元々遠い存在だった玄武くんが、さらに遠い存在になった。

そんなご本人にぺこりと頭を下げてお礼を告げられ、謙遜にも似た気持ちを抱く。


「い、いえいえ! 私は何もしてないです! こういう結果になったのも、日頃から玄武くんが周りに誠実でいたおかげだと思います!」

高速で両手を振れば、ぷはっと吹き出されてしまった。


「天音さんは優しい人だね。あ、マサト達にもお礼言わないとな……」


帰られてしまう前に感謝の気持ちを届けようと急いで身体の向きを変えようとする玄武くんに、私は以前から気になっていた、あることを尋ねた。


「ねぇねぇ、玄武くんってさ……いつからマサトと仲良くなったの?」


気にはなっていた。


真逆の雰囲気の彼らが、どこでどう知り合い、仲良くなったのかなぁって。


玄武くんは急いでいるにも関わらず、わざわざ私とまた向き合ってくれた。

「ああ、不思議に思うよね。マサトと俺って、性格は正反対だし。そうだね、マサトとは…………高校2年の冬に偶然、学校の屋上で出会ったんだ」
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