Beast Love
「おらっ、早く行けよ!」



金髪のヤンキーに蹴られ、長い前髪に眼鏡をかけているいかにもオタク風の男子が、私の座っている椅子の横に転がってきた。


このオタク君の雰囲気の、クラスに馴染んでいないの、なんのって。


私も人のこと言えないけどさ。


「ひっ、ヒィィ、やめてくれよぉ」


オタクくんはゲシゲシと自分の身体を蹴ってくるヤンキーくんに、必死に懇願していた。


ヤンキーくんと複数の取り巻き達は、嫌がる彼を見て大きな口を開けて笑っている。


「キッモ! なんだよその顔。そんな面してコッチ見んじゃねぇーよ! ギャハハッ!」

オタクくんのブレザーには、白い靴跡が幾つもついていた。

こんな光景は、日常茶飯事とでもいうかのように。


(あぁぁぁ私に絡まないでよ、頼むから。オタクくんもそんな縋るような顔して見てこないでよ、お願いだから)



目の前で行われている理不尽なやり取りに、自分の中にある苛々パラメーターが、徐々に上がっていくのを感じる。


ついにヤンキーくんは、いや、ヤンキー野郎は私の腕を無理やり掴んでその場に立たせてきた。


「痛っ、やめてよ!」


ドサッ、と乱雑に突き飛ばされ、床にうずくまってるオタクくんの上に尻餅をつく。


ヤンキー野郎は下卑た笑いを上げ、私を指差しこう言った。


「おい、お前。せっかくだから転入してきたこの女に、チェリー卒業させてもらえよ。ギャハハッ」
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