Beast Love
宵の口特有の蒼く冷えた甘い空気が流れ、切り絵のようなシルエットがふたつ、街路樹に映し出される。


私たちはとくに何を話すわけでもなく、黙々と道を進んでいた。


猫が部屋に入るような静かな足音は私のもので、凱旋将軍のような堂々たる足音はマサトのもので。


足音に耳を澄ませてなにも考えないようにしているのはつまり、そうしていないと沈黙が緊張感を高めてしまうからで。

(い、今、なに考えてるんだろう……)

アッチからなにか話してくれないかなぁとか、私なんかと一緒に帰って良かったのかなぁとか、そんな考えてもどうしようもないことばかりが浮かんでくる。


もやもやと、大きくなっていく不安と高揚。


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