Beast Love
まるで珍獣でも見るような目で動きを止めていたマサトだったが、少しして晴れ晴れとした笑い声を上げた。


「はっ! んなこと考えてたらキリねぇーよ。大切な人が困ってるなら助ける、文句なら後で聞く。それで十分だろ」


それは淡白な答えだったが、その瞳は慈愛に満ちていた。


「アキラは悪意に振り回され、過去に苦しんでいた。だからコーチと戦えるような舞台を作って、助け船を出した。それが正しい行いだったかなんて、俺には分からねぇ。ただ、さっきアキラが見せた笑顔が、答えだろ?」



『私も、助けて』


頭の中で誰かがそう叫んでいる。


……嗚呼、私が羨ましいと思ったのは、真っ直ぐに生きるマサトだけじゃない。


頼もしい友人に救われた玄武くんも、羨ましかったんだ。



『私を、助けて』


鍵をかけて閉じ込めていた転校前の記憶が、ドス黒い光を放ちながら蘇る。


『あんたが余計なことするから、イジメが酷くなったじゃん!』
『そんなゴミみたいな正義感振りかざして、楽しい? ねぇ、周りのこと考えずに自己中心的に人助けして、楽しいの?』


違う、違うの。


私はイジメに苦しんでる貴女を、助けてあげたかった。


『助けてなんて、どのツラ下げて言ってんの? あんたなんか助けてくれる人間、この世の何処にもいないわよ!』


あんな結末になるなんて、想像もしてなかった。



誰か、……私を……

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