Beast Love

「嫌だぁぁぁぁぁ！ 補習で夏休みが無くなるなんて、いやダァァァ！」


お昼休み、この世の終わりような雄叫びを上げてハルカくんに縋り付く。


「ハルカくーん、なんで君はそんなに標準的な点数が取れているの？ こんな幼稚園みたいに騒々しい教室でさぁ。勉強のコツ、教えてほしいよ……」

前髪にヒヨコのピン留めをつけた友人は人差し指で上唇を押し当て、「んーっ」っと首をひねる。

「なんでだろー？ 前の方の席だからかなぁ？」

「そっかぁ、良いなぁ……」


両手を伸ばしたままパタッ、と机にうつ伏せになれば、真横から嫌味な声が降り注いだ。


「ポチ、お前が前の席に座ったって、小羊みてぇな成績取れるわけねぇーだろが」


ど正論で私のメンタルを攻撃してくる人物なんて、心当たるのはひとりしかいない。


顔を見る前に、その小憎たらしい相手の名前を口にする。


「マサト〜……くんっ！ そんなことわざわざ言われなくっても、分かってるわよっ」

どうやらマサトが屋上で仲間と昼飯を食べ終えて、教室に戻って来たようである。


ガバァッと上半身を起こし、教室に戻って来て早々に人の机の上に勝手に乗っかっている男にビシッと指をさす。


「それだけ偉そうに言うんだったら、自分はさぞかし高成績だったんでしょうねぇ？！」