Beast Love
ふんっ、と鼻を鳴らして言い負かしてやった……かと思えば、ヒラリと目と鼻の先に落ちて来た成績は、どの教科も二桁の順位ばかりで。


「え〜〜、嘘ぉ。なにこの成績……」


何度確認しても、名前の欄には鳳凰 正人と書かれている。


「カンニングしたでしょ。それか不正かなにかを……」

「んなことするかボケ。実力だ、実力」

「見た目とIQの高さが伴っていないのですが」

「ポチ公、てめぇ……」

話しかけられて嬉しいのに、口からついて出て行くのはそんな可愛げのない言葉ばかり。


(……んっ? 嬉しい? そういえばどうして私、昼休みに入ってからずっとマサト達の行動を、目で追っていたんだろう……)



ここ数日でそういうことが急に増えたので、実は困っている。


見たくもないのに、自然と目が彼を追いかけてしまっているのだ。


その姿が目に入ると胸は高鳴り、なぜか苦しくなる。


授業中でも『今どんな顔してるんだろう』って後ろを振り向きたくて、振り向けなくて。


話しかけて欲しくて、そっとして欲しくって。


まるで変な魔法にかかったみたいに、心臓がドキドキしてしまう。


こんなのは、初めてだ。


……今だってそう。


普通に喋べっているつもりでも、気付けばちゃんと笑顔で喋れているかなって気にしてる……自分じゃない自分がいる。
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